2018年11月9日金曜日

濱田研吾『脇役本』

万年橋という交差点がある。
東京の銀座を北西から南東に貫く晴海通りという道があり、日比谷の交差点からJRの高架をくぐって、数寄屋橋、銀座四丁目、三原橋と3つの大きな交差点を過ぎると首都高速の上に橋が架かっている。もちろん昔は川だった。銀座と築地の境界である。
道を訊ねられた、橋の上で。「都営地下鉄の東銀座駅はどちらでしょう」と。たしかに目の前に地下鉄の入口はある。もぐればすぐに改札口だが、東京メトロ日比谷線の改札だ。入口にも都営地下鉄という表記はない。少し銀座側にすすんで歌舞伎座脇の入口から降りた方がいい。
「ありがとうございました」の背中を呼び止める。都営地下鉄に乗ってどちらまで行くのですかと今度はこっちが訊ねかえす。行先は浅草だという。であるならば歌舞伎座脇の入口よりその先の方がいい。押上方面は反対側のホームだ。地下に潜ってさらにその下の通路を通らなければならない。歌舞伎座の先の大きな交差点を渡ると地下鉄の入口がある。そっちのほうが便利だと伝える。
はじめからそう教えればよかった。二度もお礼を言わせてしまった。
脇役本というのは映画や芝居でいつも脇をかためる役者が遺した書籍ということらしい。造詣の深い著者がカテゴライズしたジャンルといえる。
名前だけ見ても知らない役者が多い。ひとつには年代的に古いからであり、もうひとつは映画やドラマでは知ってはいてもその役者の名前までは知らないということもある。目次をながめてすぐにピンとくるのは加東大介、志村喬、有島一郎、芦田伸介、加藤嘉…、おそらく半分にも満たない。それでも吉田義夫のように「悪魔くん」のメフィストの人か!といった具合に読んでいて思い出せる役者もいる。
編集担当は映画好きな人だとC書房にいる友人に聞いた。
しばらくたって今度は新大橋通りの築地本願寺前でナミヨケシュラインはどうやって行くのかと訪日外国人に訊ねられた。
うまく教えられたかどうか…。

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