黒沼真由美はレース編みでサナダ虫を編んだり、競馬をモチーフにした油彩やドローイングなど個性的な作品を創作し、すでに何度か個展を開催している。サナダ虫をレースで編もうというインスピレーションは通いつめた目黒寄生虫館で得たという。
プラ板に精緻なダニなどの絵を描き、オーブントースターで焼いたものが今回の主作品である。甲を表面に描き、脚を裏面に描く。表と裏をシームレスに描きわけることで高低差が表現され、立体感が生まれる。会場には虫眼鏡が用意されていて、拡大して見るようになっている。顕微鏡世界の新しい表現を模索したという。
東京藝術大油絵科卒業、修士課程を修了した黒沼は、テレビコマーシャルの制作会社で企画の仕事にたずさわった。当時から突拍子もないアイデアをいくつも生み出した。ただ奇抜すぎた企画案が多かったせいか、世の中でこれといった代表作は残っていない。
あるとき、小豆、それも大納言小豆をぜいたくに使ったアイスバーのコマーシャルの企画を依頼された。彼女は小豆三納言というアイデアを考えた。大納言、中納言、少納言と三人の小豆キャラクターを描き、そのなかでアイスバーになることができるのは大納言だけ、その大納言を羨む中納言や少納言が「まろもまろも、アイスバーになりとうございます~」と地団駄踏むという抜群におもしろい企画だった。
アニメーションをつくる予算がなかったのかあるいは他の理由でカタチにはならなかったけれど、今でも鮮明に記憶にのこっている。
レイモンド・チャンドラーは『ロング・グッドバイ』、『さよなら、愛しい人』に続き三冊目になる。この本は初期の作品だという。そう言われてみれば若さというか青臭さを感じる。
フリップ・マーロウの活躍を読みながら、「まろもまろも」という黒沼真由美のCM企画を思い出した。
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