2017年12月8日金曜日

岡崎武志『ここが私の東京』

見知らぬ町が好きであてもなく歩く。
東京23区内で知らない町も少なくなった、というのはちょっと大げさでまだまだ未踏の地が圧倒的だ。
クリエーティブディレクターのKさんとは年に一二度カメラをぶら下げていっしょに歩く。浅草、浦安、千住、根岸、四谷の谷底…これまで方々踏査した。
僕は生まれてこの方東京を離れたことがない。芝に生まれて神田で育ったというような江戸っ子ではもちろんない。旧東京15区の外側(山手線の外側の郡だった地域)の出だから東京の地方人だ。
ふりかえると都内の方々に父方母方を問わず親戚が住んでいた。落合、金町、駒込西方町、赤坂丹後町、高輪二本榎、月島…。そうした地名の記憶がどこか深いところに潜んでいる。そのせいかもしれない、見知らぬ町を歩いていてもどことなく既視感をおぼえる。
Kさんは兵庫県西宮市の出身である。大学進学時に上京。以来勤めも東京である。幼少期の東京体験がない。このことは思いのほか僕にとって新鮮だ。
Kさんが青春時代に出会った東京はどんな風景だったのだろうか。興味深い。東京にずっといたことがなんだか損をしたような気になってくる。
著者の本は以前読んだことがある。『昭和三十年代の匂い』(ちくま文庫)だ。どうやらこのブログでは紹介していないようだ。2014年の4月に読み終えている。読書メーターに記録が残されている(便利な世の中になったものだ)。
地方(八王子も含めて)から上京してきた作家、詩人、漫画家そしてミュージシャンらと東京との接点がテーマである。月島、石神井、赤羽、杉並などなど。興味深い町が次から次へと登場する。残念ながらここで登場する著作は、司修の『赤羽モンマルトル』くらいしか読んでいない。とりあえず出久根達郎の自伝的小説でも読んでみようか。
著者自身も大阪からやってきた上京者だった。意外な気がした。東京をよく歩かなければ、書けない本だと思ったからだ。

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