犬を飼いはじめて10年以上になる。
義妹が飼っていたチワワが仔犬を産んで、そのうちのオス2匹を引きとることになったのである。兄貴と目される大きい方は妻と娘にゴードンと名づけられ、少し小柄な弟はパパが名前をつけていいというので迷わずヨーゼフとした。TVアニメーション「アルプスの少女ハイジ」でアルムおんじが飼っていたセントバーナードから拝借した。体重3キロに満たない小さなヨーゼフ。
基本的な世話は妻がしている。僕の出番は、留守番のときと日々の散歩である。はじめのうちは土日だけしか連れていかなかった。週末になると人の顔色を伺ってはそわそわしたものだ。コロナ禍で在宅勤務になり、天気がよければ毎日連れていくようになった。犬というのはことばはわからないが、雰囲気でわかるという。餌の時間になるとのそのそハウスから出てきてうろうろしはじめるし、そろそろ散歩の時間じゃないかと思うとこっちを見て、尻尾を激しく振る。
安岡章太郎が犬を飼っていたとは知らなかった。遠藤周作、吉行淳之介なども愛犬家であったと知る(愛犬家かどうかは知らないが、とにかく犬を飼っていた)。昭和の作家たちはずっと家にこもって原稿用紙に向かい、夜は酒場で過ごすわけだから(これも偏見かもしれないが)、犬でも飼って散歩させるくらいのことをしなくては身体によくないだろう。この本に登場する作家以外にも犬を飼っていた文筆家は多いかもしれない。
犬を飼っている人に共通するのはその思考だろう。こいつが人のことばを喋れたらなあ、とか、犬は飼い主に似るものだなどということは誰もが思う。どんなにかわいい犬を見ても自分が飼っている犬がいちばんだと思うなど。そういった意味ではこの本は犬を飼っている読者にとってありきたりの内容である。逆にいえば、犬を飼ったことのない人たちはどう読むのだろう。仮に自分がそんな立場だったら。でもそれはなかなか想像するのが難しい。
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