2022年3月19日土曜日

勝浦雅彦『つながるための言葉』

3月19日は叔父の命日である。
ちょうどお彼岸の頃でもあり、墓参りをするのを常としている。誰が供えたか、赤いチューリップが花立てに挿してあった。何年か前には黄色いチューリップが供えられていた。赤いチューリップも黄色いチューリップも叔父の仕事に所縁がある。生前をよく知る方が供えて行ってくれたのだろう。
広告の仕事をしているのだから、広告に関する本を最低でも月に一冊は読まなければいけない、30年くらい前に広告会社の大先輩にそう教えられた。最近はとんとご無沙汰である。去年は10冊ほどしか読んでいない。
広告の本といってもマーケティングやメディア、プロモーションなどなど幅が広い。主に読むのはクリエーティブに関するものだ。たいていの場合、著者はヒットCMやビッグキャンペーンを手がけた人で自身の方法論を披露している本が圧倒的に多い。ふむふむなるほどと思うものの、時間の経過とともに記憶は薄らいでいく。あの本はよかったなあと後になって思い出すこともさほどない。
筆者は学生の頃からコピーライターを志望していたという。いくつか広告会社を経験し(最初は営業だった)、現在は電通のコピーライター、クリエーティブディレクターである。若い頃から苦労をされた方なのではないかと思う。たくさんの本を読んでいて、それを血肉としている。少なくとも僕にはそう見える。コピーライターとしての仕事はほとんと知らなかったがTCC(東京コピーライターズクラブ)のサイトで見てみた。じんわりとしたいいコピーが並んでいた。言葉の一つひとつを丁寧に紡ぎ合わせているようだ。
筆者はあるときコピーライターをめざしたかもしれないが、本当に望んでいたのは言葉を通じて素敵な関係を構築することだったのではないか。「他者への敬意と愛情によって、つながる言葉をつくる」というのがこの本の大きなねらいだ。その願いはじゅうぶん叶えられていると思う。

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