2021年5月22日土曜日

伊藤公一『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。』

戸越銀座商店街で吉岡以介にまたしてもばったり出くわした。
脳疾患で倒れた母親を郊外の施設に入所させたが、区の施設に空きがあって入所できることになり、その手続きのために戸越銀座に来たという。たいへんだなというと、特養(特別養護老人ホーム)の人たちはみんな親切で、仕事に誇りを持っている。母親も保護者も等しく大切にしてくれる。問題があるとすれば面倒な手続きを強いる行政だという。なにそれ、と訊ねると、実家のある区の施設に入るにあたり、転居届を出すといいと施設に言われて窓口に行ったのだが、本人ではないから委任状が必要だという。委任状が書けるくらいなら窓口まで連れてきますよ、書かせて書けないことはないだろうが何年かかるかわかりません、あなたたちの仕事は行政サービスをすることなんじゃないですか。区民の状況を理解してあげるスタンスはないんですか。
吉岡は窓口で食い下がったという。
向こうも折れて、備考欄に委任状が書けない旨をくわしく書いてくれという。吉岡は、母親の病気に至る経緯や現在の様子など書き連ねたという。で、その書類を渡すと代理人の本人確認が必要だという、免許証を見せる。するとさらに親子関係がわかる書類、たとえば戸籍謄本が必要だという。
吉岡はいつも持ち歩いている母親の医療介護関係の保険証やら銀行の通帳、印鑑を見せたらしい。母の名前のこれだけの書類を持ち歩いていても親子だとわからないんですかと訊く。
戸籍謄本が必要です。それが区役所の答だった。
コピーライティングの指南書は多い。
広告コミュニケーションのしくみを学ぶのであれば、小霜和也谷山雅計の本が役に立つと思う。この本は少し違う。著者の広告コピーに対する考え方、姿勢、哲学が語られている。コピーを書く人のための本ではなく、コピーとどう向き合っていくかを考えさせる高度な内容だ。
ある意味、理論的というより、感覚的な本に思えるのはそのせいかもしれない。

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