2019年1月24日木曜日

橋本治『ちゃんと話すための敬語の本』

古い西部劇を観た。
ジョン・スタージェス監督「OK牧場の決斗」とジョージ・スティーヴンス監督「シェーン」の2本。NHKBSで放送されたものを録画した。同世代以上の多くの人がいちどは観ている映画すら観ていないものが多い。前向きに解釈すれば、まだまだ未知の映画がたくさんあるということだ。
西部劇のいいところはアメリカらしさにあふれているところだろう。馬を下りて、店のカウンターに立ち、ショットグラスに注がれたウイスキーを一気にあおる。実にアメリカ的な光景である。ちょっとしたいざこざが起きる。だが、大事には至らない。チンピラが絡む程度である。本当の事件はここからはじまる。
なんといってもアメリカ的な存在はヒーローだ。悪と対峙するヒーローという図式がアメリカ映画の真骨頂である。近年ではコンピュータグラフィックスなど映像技術のめまぐるしい進化によってより高度で複雑なエンターテインメント映画が増える一方だが、悪いやつ(ら)をやっつける正義の味方という関係性が何にもましてわかりやすいアメリカ映画の方程式だ。
1950年代、60年代の西部劇にはヒーロー映画の原型がある。ドキドキハラハラしながらも、最後は敵をやっつけてすっきりする。これがアメリカ映画だ、と胸をなでおろす。
ちくまプリマー新書のターゲットは高校生あたりか。興味深いテーマが多く、内容的にも平易でわかりやすい。読みやすいから読んでいるだけではなく、会社の若い人たち、特にふだんあまり活字に触れる機会が少ない者たちにもすすめやすいからという理由でときどき読む。今さら敬語でもないだろうけれど、こういう本も読んでおかなければいけない。歳をとるというのはめんどくさいことなのだ。
この本は敬語の本というより、人間関係の本とでも言おうか。人との距離を縮めたいのか、維持したいのかでことばは変わる。「敬語って何なんだろう」を考えさせる本である。

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