2017年4月19日水曜日

曽根香子『その辺の男には負けないわ』


ずいぶん前の話。民主党の選挙CMのプレゼンテーションをお手伝いした。
CMの提案というのは絵コンテという4コマ漫画のようなボードをつくって完成形をイメージしてもらうのだけれど、そのときイラストレーターに描いてもらった菅直人があまり似ていなかった。鳩山由紀夫はまあまあ似ているのに菅直人が似ていない。時間も限られているのでボードに仕上げて広告会社に確認しに行った。案の定、「菅さんが似てないわよ!」の怒声を浴びた。
プレゼンテーションは翌日。この時点で20時をまわっている。カラーで描いてもらったイラストレーションを修正するのは相当難しい。このあとどう対応しようかと思案している間も「菅さんが似ていない!」と30分に150回ほど浴びせかけられた僕は明日朝まで描き直して来ますと引き下がるしかなかった。イラストレーターに再発注することもできず、僕は夜を徹し、ひとりで描き上げ、着彩した。
「菅さんに似てない」と、月に35日降る屋久島の雨のように浴びせかけた人が曽根香子である。
はじめて会ったのは平河町のおでん屋だった。おしゃべりだけどバイタリティあふれる女性だと思った。酔ってスペイン語を話していた。
それ以降、幾度となく曽根香子の提案の手伝ってきた。
直観に優れている彼女は、本書に書かれているとおり、これと決めたゴールに突き進む。時間もないし、これくらいでいいだろうと思ったのがいけなかった。曽根香子は自分で決めたことに嘘がつけない。志に一途な人なのだ。僕は今でも言い訳めいたことばを繕って逃げようとした自分を恥ずかしく思っている。
これまで曽根香子の友人を何人も紹介してもらった。こういってはなんだが、彼女にはもったいないくらい素敵な人ばかりだった(汗)。
この本には著者にとってばかりではなく、世間一般としてみても素晴らしい人物が何人も登場する。一人ひとりがきっと曽根香子のまっすぐな人がらを愛していたのだろう。

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