2016年1月14日木曜日

司馬遼太郎『世に棲む日日』

暮れに千住を歩いた。
事前に地図を見ながら思い出したのは荒川放水路の開削によって東部伊勢崎線(今はスカイツリーラインという愛称で呼ばれているらしい)のルートが変更されたこと。以前読んだ本(それが思い出せないのだが)によると伊勢崎線は鐘淵からゆるくカーブを描きながら、堀切、牛田を通り、北千住に向かっていた。ところがちょうど堀切駅あたりが荒川の水路となるため、鐘淵〜堀切間を直線にした。結果、荒川の土手沿いを走る路線となり、いちど廃駅になった堀切駅がその後、荒川の東岸土手下に駅舎を構えることになった。このとき駅名を変えればよかったのだろうが、堀切という名前のままにした。堀切は荒川を渡ったところの葛飾区の町だが、その手前の足立区千住曙町に駅があるのはそういうわけだ。
もう少し下流に京成押上線八広駅がある。この駅は平成4年まで荒川駅と呼ばれていた。山田洋次監督「下町の太陽」で倍賞千恵子を勝呂誉が追いかけてくる荒川土手の上にある駅だ。このあたりは墨田区八広なのだが、荒川区と間違えられるというので駅名が変更されたという。そもそもこの駅ができた頃、荒川区はまだなかった。
『世に棲む日々』は前半が吉田松陰、後半が高杉晋作にフォーカスした大河小説だ。昨年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」とシンクロする部分も多い。「花燃ゆ」は明治中ごろまで話が続く。江戸~明治をこれほど跨いだドラマも珍しい。
松陰も高杉も幕末維新に欠かせない存在ではあるが、到底ふたりだけでは語りきれない。その前後があってはじめて物語になる(黒船から大政奉還、鳥羽伏見の戦いくらいまでがひとかたまりの歴史のような気が個人的にはしている)。2大スター豪華共演的な小説ではあるけれど、よほど筆力に自信がなければ実は難しいテーマなのではないかと思う。その点ひょうひょうと書き連ねて読みものにしてしまうのが司馬遼太郎という作家の実力なのだろうが。

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