ソーシャルネットワークの時代、広告はどう変わっていくのか。
ずいぶん以前からこの議論はなされてきて、その成果がすぐれた書籍となって世に出ている。
佐藤尚之の『明日の広告』、『明日のコミュニケーション』、須田和博『使ってもらえる広告』、佐々木紀彦『5年後メディアは稼げるか』、ロブ・フュジェッタ『アンバサダー・マーケティング』など。いずれもたいへん勉強になる。
この本もそうしたソーシャル時代の広告のあり方をさぐった本で効果的な実例が紹介されていてわかりやすい。
SNSは人間が本来的に持つ社会性を可視化したしくみで企業と生活者のフラットな関係を構築する。ソーシャルメディアはコミュニケーションという社会性の拡張であるという。衣服が皮膚の拡張、テレビ、ラジオが視聴覚の拡張であるのと同様に。
広告の役割は企業と生活者、あるいはブランドのファンをつなげること。ベストエクスペリエンス(従来のマス主体の広告は都合のいい面だけを見せるベストショットだった)が生み出す共感をコンテンツとしてそのつながりの上を自走させることがたいせつになる。
そして関係を維持継続する内発的動機を働かせるゲーミフィケーション。
どうやらテレビコマーシャルや新聞広告、ポスターの絵柄を考えるだけではなくなったのだ、広告の仕事は。次々にデジタルが生み出すテクノロジーやプラットフォームを活用して人と人、人と企業をつなげていく。もちろんCMやポスターのビジュアルもだいじなのだが、それを考えるだけではだめだということだ。
この本にも書いてあったが、昔の商売は顧客の顔が見えた。だからその関係をたいせつにしていた。いつしか大量生産、大量消費の時代になり、顔の見えない見知らぬ顧客を相手に商売をするようになった。それが今、企業と生活者、生活者同士がコミュニティをつくってつながっている。奇しくもテクノロジーによって商売の本来の姿が戻ってきた。
広告コミュニケーションは間違った方向には進んでいないと思う。
2015年5月25日月曜日
2015年5月22日金曜日
アンナ・カヴァン『氷』
ツイッターでちくま文庫をフォローしている。
売れている本があると次から次へとリツイートされる。タイムラインはその本の話題一色になる。その展開に引きこまれていくだとかわくわくするだとか一気に読んでしまったなどといった個人の感想だ。これらのツイートを読んでいるだけでこれは読まないといけないかも、という気にさせられる。
その一冊がアンナ・カヴァンの『氷』だった。
SNSで流行っているから読むというのも動機が薄弱だが、本との出会いなんてそんなものだろうとも思う。もちろん著者に関する知識はまったくなく、まるっきり無防備の状態で読了した。
その後ネットなどで調べてみるとアンナ・カヴァンはイギリスの小説家で幻想文学またはSF小説と分類される作品を残しているらしい。生涯にわたって精神を病み、薬物などの依存もあったという。またフランツ・カフカの強い影響を指摘する記述も見られる。
生まれは1901年フランスのカンヌ。20世紀初頭のカンヌがどのような町だったか想像もできないが、映画祭がはじまったのが1946年。世界的なリゾートになる前の海辺の小さな集落だったのではないだろうか。カンヌには行ったことがあるのでカンヌ生まれという点に関しては妙に反応が鋭くなってしまうのだ。
さて本の中身なんだが、読んでみてもさっぱりわからない。どういう時間軸で展開されているのか場所はどこなのか(具体的な地名はまったく出てこない)。数少ない登場人物である少女も長官もどんなキャラクターなのか雲をつかむようである。氷というのは何もメタファーなのか。読みすすめているうちに何かわかってくるかと思うとそういうわけでもない。どきどきわくわくしながら読んだ読者も多いようだが、どこをどう解釈すればこの世界に引き込まれるのか、ちょっと理解に苦しむ。もちろん誰かに説明してもらおうとも思わない。わからないものはわからない。これでいい。
これもあくまで個人の感想である。
売れている本があると次から次へとリツイートされる。タイムラインはその本の話題一色になる。その展開に引きこまれていくだとかわくわくするだとか一気に読んでしまったなどといった個人の感想だ。これらのツイートを読んでいるだけでこれは読まないといけないかも、という気にさせられる。
その一冊がアンナ・カヴァンの『氷』だった。
SNSで流行っているから読むというのも動機が薄弱だが、本との出会いなんてそんなものだろうとも思う。もちろん著者に関する知識はまったくなく、まるっきり無防備の状態で読了した。
その後ネットなどで調べてみるとアンナ・カヴァンはイギリスの小説家で幻想文学またはSF小説と分類される作品を残しているらしい。生涯にわたって精神を病み、薬物などの依存もあったという。またフランツ・カフカの強い影響を指摘する記述も見られる。
生まれは1901年フランスのカンヌ。20世紀初頭のカンヌがどのような町だったか想像もできないが、映画祭がはじまったのが1946年。世界的なリゾートになる前の海辺の小さな集落だったのではないだろうか。カンヌには行ったことがあるのでカンヌ生まれという点に関しては妙に反応が鋭くなってしまうのだ。
さて本の中身なんだが、読んでみてもさっぱりわからない。どういう時間軸で展開されているのか場所はどこなのか(具体的な地名はまったく出てこない)。数少ない登場人物である少女も長官もどんなキャラクターなのか雲をつかむようである。氷というのは何もメタファーなのか。読みすすめているうちに何かわかってくるかと思うとそういうわけでもない。どきどきわくわくしながら読んだ読者も多いようだが、どこをどう解釈すればこの世界に引き込まれるのか、ちょっと理解に苦しむ。もちろん誰かに説明してもらおうとも思わない。わからないものはわからない。これでいい。
これもあくまで個人の感想である。
2015年5月21日木曜日
山本周五郎『樅の木は残った』
このブログのフォントがあるときから大きくなってしまってどうも気に入らない。なんとか元に戻せないかと暇を見てはあれこれ調べているんだけど。
今ごろになって山本周五郎を読みはじめた。
どの本を読んでもたいていの人がもう読んでいる。
読書メーターという読書記録のSNSをFacebookと連携させているのだが、上巻を読み終え、中巻を読んでいるときに高校時代の友人から原田甲斐が惨殺されるという結末をおしえてもらった。当人は「上巻を読み終えた」ではなく「樅の木は残ったを読み終えた」と勘違いしたらしく、子どもの頃視た大河ドラマの話などをまじえてコメントしてくれたんだが、なんとか書房で編集の仕事にたずさわっていながら(職業はあまり関係ないか)、ネタバレするかおまえって笑ってしまった。
歴史の方はまったく詳しくないが、史実に残る原田甲斐は悪役で兵部宗勝の太鼓持ちとされている。味方を欺くまで悪役に徹し、藩の危機を命をかけて救った男として壮大なフィクションに仕上げたのがこの物語で山本周五郎独自の視点がここにある。
NHK大河ドラマの「樅の木は残った」では原田甲斐を平幹二郎が演じている。まったく記憶にない。おそらく当時日曜の夜は青春とはなんだみたいなドラマを視ていたように思う。はじめて通しで視た大河ドラマは「新・平家物語」で後にも先にも視聴をコンプリートしたのはこれだけだ。ちなみに現在放映されている「花燃ゆ」もどうしたわけかずっと欠かさず視ている。視聴率は相当低迷しているらしいが、投票率の低い選挙に出かける気分だ。原作はなくオリジナルの脚本だそうだが、やはり骨太な原作があったほうがいいんじゃないかな。
『青べか物語』を皮切りに、『五辦の椿』、『赤ひげ診療譚』、『さぶ』、『ながい坂』と周五郎の長編を読んできた。どちらかというとにわか周五郎ファンなのでおすすめの一冊があればぜひおしえてもらいたいと思う。
今ごろになって山本周五郎を読みはじめた。
どの本を読んでもたいていの人がもう読んでいる。
読書メーターという読書記録のSNSをFacebookと連携させているのだが、上巻を読み終え、中巻を読んでいるときに高校時代の友人から原田甲斐が惨殺されるという結末をおしえてもらった。当人は「上巻を読み終えた」ではなく「樅の木は残ったを読み終えた」と勘違いしたらしく、子どもの頃視た大河ドラマの話などをまじえてコメントしてくれたんだが、なんとか書房で編集の仕事にたずさわっていながら(職業はあまり関係ないか)、ネタバレするかおまえって笑ってしまった。
歴史の方はまったく詳しくないが、史実に残る原田甲斐は悪役で兵部宗勝の太鼓持ちとされている。味方を欺くまで悪役に徹し、藩の危機を命をかけて救った男として壮大なフィクションに仕上げたのがこの物語で山本周五郎独自の視点がここにある。
NHK大河ドラマの「樅の木は残った」では原田甲斐を平幹二郎が演じている。まったく記憶にない。おそらく当時日曜の夜は青春とはなんだみたいなドラマを視ていたように思う。はじめて通しで視た大河ドラマは「新・平家物語」で後にも先にも視聴をコンプリートしたのはこれだけだ。ちなみに現在放映されている「花燃ゆ」もどうしたわけかずっと欠かさず視ている。視聴率は相当低迷しているらしいが、投票率の低い選挙に出かける気分だ。原作はなくオリジナルの脚本だそうだが、やはり骨太な原作があったほうがいいんじゃないかな。
『青べか物語』を皮切りに、『五辦の椿』、『赤ひげ診療譚』、『さぶ』、『ながい坂』と周五郎の長編を読んできた。どちらかというとにわか周五郎ファンなのでおすすめの一冊があればぜひおしえてもらいたいと思う。
※2021年8月22日追記。フォント問題は書式をクリアすることで解決した。
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