2013年1月15日火曜日

高村薫『マークスの山』


正月休みのあいだに、平山秀幸監督「レディ・ジョーカー」を観た。
原作は高村薫。市井の薬局店主、町工場の職人、トラック運転手から大企業の経営陣、警察、検察、マスコミと、社会のいくつものレイヤーが微妙にリンクしながら完全犯罪を織り込んでいく大作だ。この複雑、巨大なフィクションをどう映画化しているのか、尽きない興味を持って観てみたのだ。
脚本が上手い、と言うのもおこがましい話なんだけど、よくぞここまで集約して、しかも味のある物語にまとめ上げられたなというのが率直な感想だ。渡哲也が演じる物井清三がいい。合田雄一郎のキャスティングはこれでよかったのか、などと言ったらきりがないのでそれはやめておこう。
さて『マークスの山』であるが、こちらは「血と骨」の崔洋一監督が映画化している。事件が残虐なだけにさぞかし暴力的な描写になっているのではないかとまだ見ぬ段階で想像している。
一方で『レディ・ジョーカー』同様、緻密な取材の上で書き上げられたと思われるこの作品の舞台をたどってみるのも大きな楽しみのひとつだ。あいにく山登りの趣味はないので、北岳山頂を訪ねよう気力も体力もないが、京成町屋、足立小台、旧都立大周辺の八雲、王子、赤羽など歩いてみたい町がまた増えた。『レディ・ジョーカー』が主として品川区~大田区の京浜急行沿線を主な舞台にしていたのに対し、『マークスの山』は都内を縦横に走りまわる印象だ。小説の舞台を歩いてみるのは読んでいるときの興奮が呼びさまされるのがなんとも楽しい。
『マークスの山』を越え、次なるターゲットは『照柿』だ。どうやら拝島あたりから物語がはじまるらしい。さらに『太陽を曳く馬』を経て、はやいところ『冷血』にたどり着きたいと思っている。

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