2012年11月24日土曜日

パウロ・コエーリョ『アルケミスト』


8時ちょうどに新宿駅を発車する特急あずさ2号はもうない。
1978年10月のダイヤ改正の際、下り列車の号数には奇数を、上り列車には偶数をと割り当てられるようになったからだ。
狩人のデビュー曲「あずさ2号」がヒットしたのが1977年。「8時ちょうどのあずさ2号で」という歌詞が成り立つにはぎりぎりだったといえる。
あずさ2号で思い出すのは友人Oだ。Oには高校入学時にひと目ぼれした同級生がいて、その後クラスは別になったもののずっと思いを寄せていたという。3年生になり、1学期の期末試験が終わって、家でのんびりラジオを聴いていたときのこと、スピーカーからノイズに混じって聴こえてきたのがその女子の名前だった。話を聞いてみると当時そのラジオ番組で狩人とあずさ2号に乗って白馬に行こう、みたいな企画があり、彼女ははずれてもともと、ひやかし半分で応募した。Oがたまたまラジオを聴いていたときがちょうど当選者発表の日でその名が読み上げられたらしいのだ。
Oに言わせると、いつもはその時間帯は他局の番組を聴いていたのだが、その日さほどおもしろくもなかったので隣局に周波数を合わせてみた。もちろん同姓同名ということもあるし、半分信じて半分信じていなかったという。ところがそれから何週間かたって、Oのもとに一通の絵はがきが届いた。青空に映える白馬岳の写真だった。
この本は世界中で愛されている名著であると実は最近知った。夢を信じて、心の声に耳を傾けて生きていくことのたいせつさを教えてくれる。
白馬の青空に恥じない生き方をOはいまでもしているだろうか。

2012年11月23日金曜日

北真也『クラウド「超」活用術』


大井町線のガード下はずいぶん趣きが変わった。
かつて飲食店や食料品の店が並んだ細い商店街が区画整理され、広い通りになっていた。ガード下にはスナックや居酒屋、定食屋の名残は残ってはいたが、向かい側の店はすっかり道路になってしまったのだ。まるでダムのなかに沈められた集落みたいだ。そしていまやガード下の店も住人も立ち退きを要求されているらしい。すでに解体がはじめられているところもあれば、窓際に抗議の横断幕を提げている家もある。店はどこもベニヤ板でふさがれていた。いまどんな事態になっているのかはここで語る立場ではないが、なつかしいこの町の風景がこれ以上なくなってしまうのは如何ともしがたい思いだ。
このガード下をさらに進むと下神明駅がある。かつて、なかにし礼が住んでいた品川区豊町という町がある。

 下神明の駅から大井町まで電車のガード下の細い道をぶらぶら歩いた。
 いつまでもつづく緩やかな登りの坂道だった。
 電車でひと駅の距離であったが歩くと十分かかる。(なかにし礼『兄弟』)

さてクラウド本も次々に出ているので、できれば新しいものを読みたいとは思うのだが、正直いってどれを読めばいいのかなかなか判断がつかない。Webで達人たちの記事を拾い読みするという方法もあるんだろうけど、一冊通して読むほうがわかりやすい。そういう野暮な期待にこの本はじゅうぶん応えてくれているんじゃないか。

2012年11月22日木曜日

佐々木俊尚『仕事するのにオフィスはいらない』


JR大井町駅は出口が上と下にある。
一般にはどうとらえられているかわからないけれど、子どもの頃から大井町には東急大井町線との乗換改札のある上の出口と阪急百貨店とバスターミナルのある下の出口とがあり、地元の人たちは(少なくとも僕の母は)そう呼んでいた。下には阪急があり、上には商店街があった。右に行くと大井町線の線路の下が商店街になっており、左、つまりゼームス坂や仙台坂の方に向かっても商店街があった。
大井町線のガード下とその向かい側の商店街を母は権現町と呼んでいた。昔の町名で大井権現町。町の名前が変わってもその土地は昔からずっと権現町だったのだ。商店街は駅から西へなだらかに下るバス通りになっている。歩道には屋根が付いていて、子どもの頃はちょっとモダンな感じがした。坂を下りきって右に曲がると品川区役所。その先は大崎だ。左に行くと第二京浜国道。国道を渡れば荏原町、旗の台が近い。大井町線は左右の道の真ん中を、権現町から直進するように西に伸びる。
大井町線に沿うように細い道が下神明(大井町線の次の駅)に向かっている。きらびやかな権現町の商店街はここから飲食店が増え、生活臭が俄然増す。かつてこのガード下にあった魚屋で夏目雅子が買い物をしていた。もちろん映画「時代屋の女房」のワンカットとして、である。
佐々木俊尚のよさは強靭な説得力ではないかと思っている。そしてその強さは自身を律する強さであり、その強さこそがノマドというワークスタイル成功の秘訣なのだと思う。

戸田覚『仕事で差がつく! エバーノート「超」整理術』


野球シーズンもようやく終わる。
大学の新チームによる秋季オープン戦などは各校のグランドで行われるようだが、大阪の社会人選手権と東京の明治神宮大会で今年のアマチュア野球は終了だ。
というわけで今年も寒空のなか、神宮球場まで足を運んだ。観戦したのは高校の部の準決勝と決勝。
4強に残ったのは東北代表仙台育英と北海道代表北照。そして中国代表関西と北信越代表春江工。1、2回戦は接戦が多かった。安田学園も高知、浦和学院も僅差で敗れた。そんな中で打力が際立っていたのが仙台育英。北照のエース大串を2巡目でとらえ、あわやコールドゲームかというところまで点差を広げた。それも走者を貯めて、3ランと満塁ホームランで。
準決勝のもうひとゲーム、関西と春江工は四死球とエラーの多い大味な試合だった。結果は相手のミスにつけ込んだ関西がコールド勝ち。大差で勝った両校による決勝となった。
流れとしては仙台育英有利とふんでいた。ところが先制したのは関西で、これはおもしろい試合になりそうだと思った矢先の3回、仙台育英が7連打を含む10安打で9得点のビッグイニング。12−4と思わぬ大差で初優勝を飾った。
3試合を観た限りでは来春センバツで注目を集めそうな好投手は見当たらなかった。春は投手力とよく言われるけれど、この明治神宮大会からセンバツへのイメージをつかむのはちょっと難しかった。とはいえ、昨年に引き続いて東北代表が優勝したことでセンバツの枠がひとつ増えたことはよろこばしいことだ。
で、この本を読んだのは7月。ちょっと時間が空いてしまった。正直に言うとあまり内容を憶えていないんだけど、いまこうしてEVERNOTEを人なみに使っていけてるのだから、役に立っていると思っていいだろう。それにしても新書サイズで横書きは少々読みにくい。