2011年4月16日土曜日

吉村昭『三陸海岸大津波』


吉村昭は卓抜した取材力と冷静に綴る文章で史実を克明に記す作家だ。この本は明治29年、昭和8年、昭和35年に三陸海岸を襲った地震を多面的に記録したすぐれた作品である。
ぼくは大津波というものをSF映画的なイメージでしかとらえることができなかった、今まで。それを今回テレビのニュース映像で視ることで、その被害の甚大さをあらためて知ったもののひとりである。そしてこの歴史的な事件をしっかり焼きつけておく必要があると感じた。
先日、仕事仲間との昼食会の折(そこではたいてい食後に最近読んだ本が話題になる)、おいしい鯛茶漬けをつくってくれたSさんがすすめてくれたのがこの本だった。吉村昭は以前、『羆嵐』でドキュメンタリーのすぐれた語り手あることを知っていたので、その帰りに買い求め、一気に読み終えた。

 海底地震の頻発する場所を沖にひかえ、しかも南米大陸の地震津波の
 余波を受ける位置にある三陸沿岸は、リアス式海岸という津波を受ける
 のに最も適した地形をしていて、本質的に津波の最大災害地としての条
 件を十分すぎるほど備えているといっていい。津波は、今後も三陸沿岸
 を襲い、その都度災害をあたえるにちがいない。

吉村昭の予言どおり、津波はやってきた。それも過去の教訓をも突き崩す勢いで。
東日本大震災の被害状況はいまだ把握されていない。いずれ21世紀の吉村昭が今回の津波の被害を克明に記す日が来るだろう。

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