2010年12月21日火曜日
吉野源三郎『君たちはどう生きるか』
今月のはじめにACC(全日本シーエム放送連盟)の主催するコマーシャル博覧会というイベントに行ってきた。
コンテンツは著名なクリエーターによる講演や今年のCMフェスティバルの入選作品、日本の名作CM選、海外クリエーターのドキュメントフィルムなどの上映である。
ぼくはそのなかで「杉山登志作品集」と「もう一度みたい日本のCM50年」、そして映画「Art&Copy」を観た。杉山登志はかつて資生堂のCMなどでコマーシャルの世界を席巻した天才CMディレクターであり、今の時代からみればその映像の見た目はそれなりに古びてきてはいるが、随所に当時としては大胆な手法を取り入れてきたその手腕に感心させられる。「Art&Copy」はここ何年かで世界的に注目を浴びたCMの制作者にスポットをあてたドキュメンタリー。すぐれたクリエーターというものはすぐれた言葉を吐くものだ。
で、実はいちばん楽しみにしていたのが「もう一度みたい日本のCM50年」だった。
結論からいうとこれはぼくの期待に応えていなかった。それはかつてACCで表彰された秀作のリールであり、この業界にいるものなら誰も知っている、見たことのあるお手本集だった。そうじゃないんだ、ぼくが観たかったのはぼくが子どもの頃なんども視て、記憶にとどめていた昭和の普段着のCMなのだ。「ほほいのほいでもう一杯ワタナベのジュースの素ですもう一杯」とか「ハヤシもあるでよ」とか「うれしいとめがねが落ちるんですよ」なのだ。
『君たちはどう生きるか』、これも関川夏央からインスパイアされた一冊。
もともと健全な青少年を育成するタイプの本だけに今さら読むのはどうだかなあと思っていたんだが、これはむしろうす汚れてしまった大人こそが読むべき本であろう。デジタル化されて、斜に構えた今どきの子どもたちになんか読んでほしくない。
世の中に、人生にくたびれ果てたおじさんたちにさわやかな一陣の風を送り込む、そんな本である。
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