30年以上前、僕は小さな広告会社でテレビコマーシャルなどをつくっていた。
ある日、ベテランの営業担当から声を掛けられた。ペットボトルを製造する機械をつくっている会社がある、企業紹介の動画を制作してくれないかと。数日後、上野発金沢行の特急に乗って、小諸に向かった。長野行の特急も日中何本かあったが、早朝立つには混み合う金沢行しかなかった。新幹線のない時代、高崎、横川、軽井沢を通って小諸駅で下りる。本社と工場は駅の北西方向にあり、タクシーで10分ほどの距離だった。工場を見学させてもらい、動画の主役となる最新の機械について説明を受け、伝えたいことなどを打合せする。構成案を再来週にお持ちします、みたいなことを確認してその日は切り上げた。駅前の蕎麦屋で昼食を摂り、帰京した。
あれは何月だったのだろう。暑くもなく寒くもない普通の一日。天気はよかった。
翌々週、再び小諸。動画の構成案を持参し、多少の手直しがあったが、これで制作してもらいたい、となった。前回同様、営業と蕎麦を食べて帰る。3回目の訪問は制作会社のスタッフらとのロケハンだった。このときの記憶はほとんどない。その後の撮影は営業と制作会社に任せたので小諸に出向くこともなかった。編集、録音、試写も都内のスタジオだった。
小諸の町を散策したことはない。会社員時代はこうした行って帰るだけの出張が多かった。札幌も仙台も岡山も那覇も、夜に飲食した店くらいしか旅の思い出はない。
3年前、軽井沢に行くのに小海線で小諸に出た(遠回りではあった)。駅前を少し歩いて、昔行った蕎麦屋をさがした。見つからなかった。この頃は以前と違って小諸駅のそばに小諸城址懐古園があることも地図で知っていた。ただ訪ねる時間がなかった。
小諸は歩いてみる価値がある。千曲川も近い。島崎藤村が教えてくれた。今度軽井沢を訪ねたら小諸に立ち寄り、千曲の流れをゆっくり眺めてみたいと思った。
0 件のコメント:
コメントを投稿