2023年3月8日水曜日

夏目漱石『虞美人草』

子どもの頃、スポーツで世界に通用する競技がどれほどあっただろうか。
すぐに思い浮かぶのは、男子体操、柔道とレスリング、重量挙げ(当時女子はなかった)、バレーボール。あとはスキージャンプ。競泳で世界と互角に戦える選手もときどきあらわれたが、陸上競技でメダルを獲得したのはメキシコ五輪の君原健二くらいしか思い浮かべることができない。円谷幸吉は実際の記憶に薄いが教科書に載っていたのでよくおぼえている。
この50数年で世界レベルに近づいた競技も多くなった。サッカーやラグビーのワールドカップで強豪国と渡りあうことだってザラである。フィギュアスケートやスピードスケート、バドミントンなど。バスケットボールやバレーボールも国際的な大会では苦戦を強いられているが、若い才能が世界のトップレベルのクラブで活躍している。経済成長の真っ只中、伸び悩んでいた日本のスポーツが課題だらけの少子高齢化の世の中で大きく花開いているのもちょっと皮肉だ。
『虞美人草』は夏目漱石初期の長編。漱石が小説家として活動したのは10年ちょっとだから、初期も後期もないとは思うが。初期のこの作品はさほど深刻なドラマはない。どちらかといえば読みやすい。高慢な女と煮え切らない男。さらにその後の漱石の小説の主役となる神経衰弱の男と実務に長けたリアリストが登場する。
この頃の作品に細かな東京の地名は出てこない。この小説にも出てくるが、東京勧業博覧会が上野で開催されている。場所を特定できるのはこの上野恩賜公園くらいだろう。1907年のことだ。その少し前に東京馬車鉄道が電化され、後に東京市電となるのであるが、この頃はあまり便利な乗りものでもなかったようである。主な移動手段は人力車であることが読んでいてわかる。
もうすぐワールド・ベースボール・クラシック(WBC)がはじまる。ダルビッシュ有、大谷翔平ら世界レベルのプレーが今から楽しみである。

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