成績如何では引退を余儀なくされる崖っぷち横綱白鵬、そして3連覇と横綱昇進をかける大関照ノ富士が全勝で千秋楽を迎えた。歴史をひもとくと千秋楽の全勝対決は過去に5回しかないという。直近では2012年の同じく名古屋場所の横綱白鵬と大関日馬富士。このときは日馬富士が勝って全勝優勝した。
14日間の土俵で安定した強さを見せていた照ノ富士が白鵬を圧倒するのではないか、そう思ったのは僕だけではないだろう。今場所の白鵬は横綱という看板だけで相撲をとっていた。威圧的、威嚇的な相撲で内容的には今ひとつだった。結果的には白鵬が勝ち名乗りを受け、全勝優勝を果たしたわけだが、千秋楽の相撲はことさら杜撰だったと言わざるを得ない。肘打ち、張り手、関節技のような強引な小手投げ。勝負にだけこだわった品格のない相撲内容。しかも雄叫びとガッツポーズのはしたないおまけ付き。場所後横綱に昇進するであろう照ノ富士に、横綱という地位は勝つためなら手段を選ばないのだというメッセージだったのか、こんな品位に欠ける相撲をとってはいけないのだというメッセージだったのか。
いずれにしても白鵬の心技体が劣化していることが証明された名古屋場所だった。45回目の優勝。おそらくこれが白鵬最後の優勝になるのではあるまいか。
佐野洋子はこれで何冊目になるだろう。
この本はエッセーのようなフィクションのような不思議な空気をまとっている。おもしろいかおもしろくないかと訊かれれば、間違いなくおもしろい。どこがおもしろいかというのは難しいのだが、吸った息をそのまま吐きだすように綴られた一つひとつの文章がおもしろいのだ。著者の思っていることが嘘いつわりなく書かれているように思えて、読んでいてなぜかうれしくなったりするのである。自然体であるとか力みがないとか、そういう文章技術以前に人間まる出しな感じがなんともいえずいいと思う。
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