2019年4月7日日曜日

リテールAI研究会『リアル店舗の逆襲』

目黒川の桜がきれいだというので目黒駅で下車。西側が斜面になっている。夕陽がまぶしい。
初老の、といっても僕より十かそこら歳上と思われる上品な紳士と目が合う。道を訊ねたかったのだろう。
「すみません、アマゾン川がこの近くにあると聞いたのですが」
とっさに目黒川の桜を見にきた人だろうと思い、アマゾン川ではありません、目黒川です、今日あたり満開できれいですよ、この坂道を下ったところです、などと返答する。ちょうど僕も川沿いを歩こうと思っていたので、いっしょに歩くことにした。
「さがしてる本がありましてね」
聞けば、古書を探して早朝の高速バスで北関東のとある都市から東京に出てきたという。神田神保町に向かい、目ぼしい古書店を見てまわったが、お目当は見つからない。都内かその近県に娘さんが住んでいて、電話をしたらしい。
「アマゾンならあるっていうんですよ。それで交番で訊ねたら、目黒だというんで地下鉄でここまで来たんです」
それからしばらくアマゾンのことを話した。
そのうち、どこかでビールでもいかがですかと誘われた。僕のスマートフォンで検索し、駅前のコーヒーショップでご所望の本が見つかる。
「よかった。そこのアマゾンで買えるのですね」
この画面に出てくる商品はすべて通信販売で売られているものなんですとあらためて説明する。大きく肩で息を吐き、「そうですか」という。
結局、僕が購入して送ることにした。代金はその場でいただいた。送料もお支払いしますと言ってくれたが、ビール代でじゅうぶんですとおことわりした。
最初に彼が訊ねたのは、この近くにアマゾンはありませんかだったのだ。目黒川をめざしていた僕がそれをアマゾン川と聞きまちがえたのだ。
リアル店舗はオートメーション化をはかることでネット販売に対抗している。要するにそんな内容の本である。
ここに記したことはつくり話であるけれど、彼のもとにちゃんと本が届いたかどうか気になっている。

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