目録冒頭の文章を寄せていたのは村上春樹だった。『若い読者のための短編小説案内』という著作の中で安岡章太郎にふれている。たぶん、そのせいだろう。
小説家をテーマにした展示は古い原稿や書簡、当時の写真などがメインになる。百万年前の動物の骨やオルセー美術館に行かなければ見ることのできない名画が飾れているわけではない。どちらかといえば退屈なイベントだ。
中学校時代の卒業アルバムや当時の校章(菊の花に中とデザインされている)がガラスケースにおさめられていた。「サアカスの馬」時代のものだ。
安岡は高知県出身。土佐藩の郷士の出であるという。私小説からはじまる彼の小説家人生は、晩年になって『流離譚』や『境川』など自らの家系をさかのぼる作品にたどり着く。この展覧会は安岡章太郎というひとりの作家の旅をテーマにしている。
さて。
名前もほとんど知られていない企業が実は世界有数の技術と実績をそなえている。そんな会社が日本にいくつもある。
ここ最近、とりわけIT分野の驚異的な発展で海外の製品やテクノロジーについ目が行ってしまう。日本の産業はどうなっていくのか、労働人口の衰退とともに日本という国はだめになってしまうのではないかと懸念することが多い。もちろんそういう分野もあるだろうけれど、まだまだ知られざる日本の力があるのだ。この本に紹介されている250社はまさに前途有望。ニッポンオリジナルで世界をリードする技術やサービスを持っている。
広告している企業がメジャーだという先入観にとらわれる、たとえば生産材や部品をつくっている会社に目がいかない。実は日本を今支えている、あるいはこれから支えていくであろうビジネスはまだまだ日の目を見ない場所で力をさらにたくわえているのだ。
などと思いながら、港の見える丘公園から麦田町まで歩いて奇珍楼でワンタンメンを食べたのだった。
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