2016年4月2日土曜日

吉村昭『ポーツマスの旗』

今年の年明け、ある企業の企業広告の企画を依頼された。
空調などの設備を設計施工する会社で、広告会社の担当者はたぶん知らない会社だと思いますけど、と説明をはじめた。
僕は知っていた。四谷にあって、小学校時代の同級生Mが勤めている会社だ。
同級生といってもMとは3~4年生のときだけだ。家が近かった。僕のうちとMのうちのあいだにTがいた。朝八時になると僕がTの家に行く、TとふたりでMの家に行く。そして3人で登校した。
TもMも僕もそれぞれ都立高校に進学し、やがて大学生になった。
大学を出る頃、3人で集まって、酒を飲んだ。だからMが空調設備の会社に就職したことは知っていたのだ。十数年続いたと思う。
30代の半ば、Tが急逝した。
3人の集まりの世話役だったTがいなくなり、それからMとは年賀状だけのやりとりになった。ずっと3人で会っていたので、ふたりでどう会っていいのかわからない気もした。たとえとしてはへんだけどちょっとした『ノルウェイの森』みたいな感じだったのかもしれない。
企業CMの企画案はまとまり、Mの会社と郊外にある研究施設で撮影をすることが決まった。たまたまだったが、クライアントの広告担当の方のご主人がMの部下だという。Mに連絡してもらい、撮影の当日ほぼ20年ぶりに再会することができた。
司馬遼太郎の『坂の上の雲』を読んだ。おいおいここにアップしようと思っている。
吉村昭のこの本は学生時代大江健三郎とか安部公房を読んでいた頃、新潮社の書下ろし長編シリーズのリーフレットでその題名を記憶していたが、まったく興味がわかなかった。
日露戦争後、ポーツマス条約締結に日本の全権として尽力した当時の外相小村寿太郎の物語だ。もしこれから読みたいという方があれば、『坂の上の雲』を先に読むことをおすすめしたい。
Mの会社の人たちはみんないい人たちばかりだった。いいCMをつくらなくちゃというプレッシャーがいちだんと増した。

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