美術系の大学には油絵や日本画など芸術性に富んだ学部とグラフィックデザインや建築、テキスタイルなど実用性を重視した学部とに二分できたのではないかと記憶している。最近では映像やwebなどのデザインを中心に学ぶ学部も増えているらしい。
「情報デザイン」という言葉の響きにつられてこの本を読んでみた。
著者はおそらくしっかりした研究者・学者なのではないだろうか。いわゆるデザインという柔軟なニュアンスが文章からは伝わってこない。だからといって学術論文的かといえばそうでもなく、繰りかえしが多く、誤字も目立つ。「本は表示から始まり目次がある」とある。このくらいなら読んでいてすぐにわかる。気づかず本にした出版社の良識を疑うだけだ。
「ホームページとはWWWブラウザを立ち上げたときに表示する最初のページを指す」なんて3回も書かれている。主語の抜けた文章もところどころにあって読みづらい。この人は書いた文章を読みなおしたりしないのか。
電子版が出たのは昨年のことであるが、新書の一冊として世に出たのは2002年。内容的にも古い。たとえば情報デザインといえばコミュニケーションデザインであるといっているが、今やコミュニケーションデザインといえば電波や紙媒体、ソーシャルネットワークをどう駆使して効果的なコミュニケーションを生むかという意味で使われることが多い。メディアやコミュニケーションの歴史にも触れているが、長い。せっかく電子版で出すのなら、もういちど編集者を含めて内容を吟味すべきではなかったのか。誤字脱字はもちろんのこと、当時と大幅に変わったであろうインターネットをめぐる情報デザインに関しても再考するべきではなかったのか。
とはいえ、実のところ楽しみながら読んでいたところも少なくない。ツッコミどころがこれほどあるとついつい先へ先へと読みすすめてしまうのである。
旅先で食べてしまったすごくまずい蕎麦の思い出、みたいな。
興味があれば読んでみてもいいかもしれないが、お金を払って読む本ではない。絶対におすすめしない。
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