2015年3月24日火曜日

芝山幹郎『映画一日一本―DVDで楽しむ見逃し映画365』

昨年の彼岸は甲子園で選抜高校野球を観て、南房総に墓参りに行く予定だった。
そんな矢先に叔父の訃報が届き、あわただしく通夜葬儀が執り行われ、連休は終わった。今年は春分の日が土曜。早起きして南房総に行ってきた。
墓参りが天気のいい日ののどかな休日であればそれに越したことはないのだが、墓参りは基本、墓そうじである。とりわけ千葉の墓は草刈りだったりするわけだ。腰が痛くなる。汗が流れる。墓参りの現実がそこにある。
翌日曜日は義父の墓参りに小平へ。こちらは東京の霊園なので多少は楽だ。急にあたたかくなったからといって、秋の彼岸にくらべると作業量は少ない。とはいえ二日続けての墓そうじはこたえる。
今月はここまで5本の映画を観ている。といってもレンタルしたDVDやBSで録画したものだ。映画が好きで好きでたまらないというタイプではないのでだいたい月4本くらい観られればいいと思っている。
この作者は筋金入りの映画ファンで一日一本、年間365本とそのタイトルで謳っているが、おそらくもっとたくさん観ているのではないか。ここで紹介されている映画を実際に何本観ているだろうかと数えたところわずか38本。かろうじて1割という成績だった。
映画といえば、昔のアートディレクターやイラストレーターで造詣の深い方が多い。また彼らは音楽に関してもくわしい。今よりはるかに情報が少なかった時代、海外の文化やデザインに接することができる場は映画とレコードジャケットくらいしかなかったからではないだろうか。きっとだいじにだいじに慈しむように見られていたにちがいない。
今、映画やCDジャケットはたいせつにされているだろうか。
春の彼岸を終えると次はお盆。その前に5月の連休がある。ここのところ毎年家(父の実家)のそうじに出かけているのだ。
5月の南房総はたぶんさわやかだ。

2015年3月20日金曜日

桐原健真『吉田松陰--「日本」を発見した思想家』

昨年の今ごろは都立小山台高校が21世紀枠でのセンバツ出場を果たし、東京は盛り上がっていた。
残念ながら大会初日の第三試合、大阪履正社高校と対戦し、完膚なきまでに打ちのめされたのは記憶に新しいところだ。
今年も野球の季節がやってきた。
昨秋明治神宮野球大会の結果をベースに考えれば、優勝した仙台育英と準優勝の浦和学院が中心となるだろうが、秋の地区大会を征した学校が必ずしも春強いとは限らない。それが野球だ。
昨年の地区大会優勝校10校のうち半数が初戦で姿を消し、残る5校、駒大苫小牧、沖縄尚学、白鴎大足利、関東一、龍谷大平安のうち2回戦を突破したのは沖縄尚学、龍谷大平安の2校のみ。結果的には龍谷大平安が優勝を果たし、明治神宮大会組の面目躍如とはなったが、注目すべきは昨秋苦杯をなめ、ひと冬かけて伸びてきたチームだろう。
近畿大会で優勝した天理に惜敗したものの夏春連覇の夢がかかる大阪桐蔭、浦和学院と打ち合いを演じた健大高崎、左右のエースを擁する木更津総合、九州大会を粘り強く戦った糸満あたりか。東京の二松学舎を含め、やはり昨夏のメンバーが残っているチームは有利なのだろうか。
地区ごとの力関係はどうだろうか。
明治神宮大会で東海大四にコールド負けした宇部鴻城の中国地区、4強のうち3校が公立校だった東海地区あたりのレベルはどうなのだろう。
NHKの大河ドラマがおもしろく、久しぶりに欠かさず視ている。佐藤純彌監督「桜田門外ノ変」で水戸藩主徳川斉昭役立った北大路欣也が毛利敬親だったり、関鉄之助の大沢たかおが小田村伊之助だったり、井伊直弼が伊武雅刀ではなく、高橋英樹だったり、なかなか混乱しながらではあるけれど。
歴史はきらいじゃないが、幕末から明治にかけてはあまり勉強もしていなかった。ドラマついでに吉田松陰について学ぼうと思った。この本はおそらく著者の博士論文あたりをベースにしているのだろう。けっこう本格的な論考だ。
もっとやさしい本から入ればよかったかも。

2015年3月18日水曜日

木村浩『情報デザイン入門』

美術系の大学には油絵や日本画など芸術性に富んだ学部とグラフィックデザインや建築、テキスタイルなど実用性を重視した学部とに二分できたのではないかと記憶している。最近では映像やwebなどのデザインを中心に学ぶ学部も増えているらしい。
「情報デザイン」という言葉の響きにつられてこの本を読んでみた。
著者はおそらくしっかりした研究者・学者なのではないだろうか。いわゆるデザインという柔軟なニュアンスが文章からは伝わってこない。だからといって学術論文的かといえばそうでもなく、繰りかえしが多く、誤字も目立つ。「本は表示から始まり目次がある」とある。このくらいなら読んでいてすぐにわかる。気づかず本にした出版社の良識を疑うだけだ。
「ホームページとはWWWブラウザを立ち上げたときに表示する最初のページを指す」なんて3回も書かれている。主語の抜けた文章もところどころにあって読みづらい。この人は書いた文章を読みなおしたりしないのか。
電子版が出たのは昨年のことであるが、新書の一冊として世に出たのは2002年。内容的にも古い。たとえば情報デザインといえばコミュニケーションデザインであるといっているが、今やコミュニケーションデザインといえば電波や紙媒体、ソーシャルネットワークをどう駆使して効果的なコミュニケーションを生むかという意味で使われることが多い。メディアやコミュニケーションの歴史にも触れているが、長い。せっかく電子版で出すのなら、もういちど編集者を含めて内容を吟味すべきではなかったのか。誤字脱字はもちろんのこと、当時と大幅に変わったであろうインターネットをめぐる情報デザインに関しても再考するべきではなかったのか。
とはいえ、実のところ楽しみながら読んでいたところも少なくない。ツッコミどころがこれほどあるとついつい先へ先へと読みすすめてしまうのである。
旅先で食べてしまったすごくまずい蕎麦の思い出、みたいな。
興味があれば読んでみてもいいかもしれないが、お金を払って読む本ではない。絶対におすすめしない。

2015年3月16日月曜日

三谷宏治『戦略思考ワークブック【ビジネス篇】』

イングレス(Ingress)というゲームにはまっている。
はまっているというほどのことでもないのだが、よくできたゲームだと思う。要は歩きまわって、ポータルと呼ばれる地点をハックする。FoursquareやFacebookでいうチェックインだ。ユーザ、つまりゲーム参加者は位置情報を提供する。位置情報はいわゆるビッグデータとなって個人の行動パターン解析に役立つ。
たとえば参加者のIDがGoogleのメールアドレスにひもづけられていれば、その住所、勤務場所などはおおむね特定できる。その日いちばん最初にハック(チェックイン)した場所はそらく自宅近辺である可能性が高い。日中ハックした場所はおそらく勤務先に近いだろう。利用している最寄駅もほぼ特定できるだろうから、どの路線で通勤しているかもわかるはずだ。休日定期的に移動する人はその地域を特定することであるいは趣味などもわかるかもしれない。こうやってその人の行動パターンや行動範囲を活かして広告活動につなげていくわけだ。
なんとよくできたゲームだろう。
これまで位置情報を収集するSNSはあった。Foursquareはメイヤーとかバッジを付与することで参加者のモチベーションを支えてきた。けれどもここまでのめりこませて収集する仕組みはおそらくIngrerssがはじめてではないだろうか。頭のいい人ってやっぱりすごい。
この本では「なにがだいじか」をきちんと見極めようとする「重要思考」がビジネスに欠かせない「戦略思考」を鍛えていくと説かれている。事例も豊富だ。題名にあるとおりワークブックの形式をとっている。読者参加型の戦略思考演習本といっていい。しかしながらその課題はかなり難解だ。
この本を読みながら自分で考えていくには相当なスキルが必要だと思う。今回はとりあえず読みすすめて、なるほどなるほどと感心するにとどめた。
頭のいい人ってやっぱりすごいなと思いながら。