2013年3月25日月曜日
博報堂ブランドデザイン『ビジネス寓話50選』
仕事って何だろう。
どうでもいいようなことを最近考えさせられた。
今は広告のコンテンツをつくっている。広告会社から依頼され、広告主の利益になるような映像をつくる仕事だ。担当した商品が売れることが結果としていい仕事だったりする。その先のことまでなかなか想像力がはたらかない。その商品を買った人、使った人がどんなにしあわせになっただとか、そういったことをリアルには想像しない。あくまでコンテンツのなかのストーリーづくりのために想像するだけである。映像をつくる。そのためのしあわせ。ほんとうのしあわせではないしあわせを絵に描いているだけ。広告主の利益のためのしあわせ。
先日、バレー部のK先輩宅へ出向いて、無線LANの設定をしてきた。昨年末お孫さんが生まれた。娘さんはカナダ人と結婚し、モントリオールに住んでいる。暮れに先輩はカナダに行って、ご対面を果たしてきたそうだが、世の“じいじ”(本人はGranpaと言っている)というものは孫がかわいくて仕方のないものだ。僕の父もそうだった。とりわけ初孫はそうだ。
先輩はパソコン音痴というわけでもないのだが、基本めんどうなことが嫌いなので、やれエクセルでこんな表をつくりたいとか、自宅にメールで届いた写真を仕事場のパソコンで見るにはどうしたらいいのかとか、てっとり早く答えを聞きたく、しばしば電話をかけてくる。今回の無線LAN設定プロジェクトもそのひとつだ。
今はとにかく便利な世の中でメールで写真や動画が送られてくるのはもちろん、Skypeなどを使えばテレビ電話だってできてしまう。タブレット端末でもあれば、パソコンを起ち上げる手間もいらない。このプロジェクトのポイントはそこにあった(先輩が自分でWebカメラを買ってきてSkypeをつないだのには正直びっくりした)。先輩が奥さんに購入したiPadでSkypeをつなぐ。
作業的にはさほどの困難はなく、光回線終端装置と各部屋に振り分けるHubの間にブロードバンドルーターを設置して、先輩の居住スペースに無線LANのアクセスポイントを置く。ものの一時間ほどで無事開通。そのときの先輩と奥さんのうれしそうな顔ったらなかったなあ。そのうれしさがこっちにもひしひしと伝わってくる。海外で子育てする娘さんだって、よろこぶにちがいない。
こういう感動をもっとうまく人に伝えられたらなあと思うのだ。たとえば寓話にするとかしてね。
それにしても人をしあわせにするってたいせつなことだと、久しぶりに思った。
2013年3月24日日曜日
村上春樹『アフターダーク』
安田学園とは少なからぬ縁を感じている。
高校時代バレーボールの大会前に各支部ごとに(東京は4支部にわかれていて千代田区は第2支部だった)代表者会議なるものがあり、要は組合せの発表があって、公式戦に向けて簡単なルールの説明が行われるのだが、その会場校が両国にある安田学園だったのだ。
それから15年ほどして、CMプロデューサーのフジちゃんと知り合った。
とある夏の日の昼前、フジちゃんはひょっこり僕の仕事場に顔を出し、ちょっと近くまで来たんで寄ってみたという。てっきり昼でもいっしょにと誘いに来たのだとばかり思っていたら、これから息子の試合を観に神宮球場に行くんだという。そそくさと引き揚げてしまった。
フジちゃんのご子息テツは安田学園の野球部だった。その年はたしか東東京大会のベスト4まで進んだと思う。
その後しばらく安田学園は低迷する。ジャイアンツの阿部慎之助もこの頃の選手である。フジちゃんと飲みに行っても最近安田学園パッとしないよね、などと話していた。テツは肩だか肘だかを壊して、野球をあきらめ、その後めざしたプロゴルファーの道もあきらめてしまったが、今は茨城のゴルフ場で元気に働いているという。
昨秋、安田学園、悲願の都大会優勝というニュースが飛び込んでくる。秋季大会を勝つということは選抜出場決定ということだ。思わずフジちゃんに電話した。来年の春は絶対甲子園に行こう、と。
仕事にかまけていたら、いつしか選抜ははじまっていて、二日目第四試合が安田学園対盛岡大付だった。
村上春樹の小説は全部読んでいるつもりだったが、この本だけはどうしたわけか読み逃していた。昨年、『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2011』を読んでそのことが発覚したのだ。
はじめての甲子園で安田学園は好ゲームを見せてくれた。9回土壇場で同点に追いついた。興奮した。残念な結果に終わったが、フジちゃんもテツもいい夢を見ただろうか。
2013年3月23日土曜日
皆川典久『凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩』
大井町から武蔵小金井の大学に通っていた。
京浜東北線で品川に出て、山手線で新宿。新宿から中央線に乗り換える。電車に乗っている時間がだいたい1時間。駅から大学までは20分ほど歩く。大井町までやはり15分強歩くから、通学時間は1時間半を越えた。
往きに新宿で中央線に乗るとまだまだ先は長いと思うのだが、帰りに新宿に着くともう帰ってきたような気分になった。高円寺を過ぎて、中野に近づくとさほど遠くないところに新宿の高層ビル街が見えてきた。今ほど数多くはなかった。三角形の住友ビル、シックな色合いの三井ビル、レンガ色のセンタービル、そして京王プラザホテル。
先日仕事で新宿らしい風景を撮影することになり、どこかいいポイントはないだろうかとさがし歩いた。高島屋の屋上庭園に行ってみたりしたが、高層ビルがきれいに見える場所があまりない。そこで思い出したのが中央線の車窓から見えた高層ビル群だった。
なんどか電車で往復してみると大久保〜東中野間、東中野〜中野間で西新宿方面に視界が開ける場所がある。東中野あたりは神田川が北上するあたりで土地が低くなるので、障害物を比較的避けやすい。おそらく結婚式場の日本閣あたりから撮影すればいいのだろうが、ちょいと写真を撮らせてくださいってわけにもいきにくい。どこかさらに見晴らしのいいポイントはないだろうか東中野から山手通りを北上してみた。そうだ、中井だと思い出した。
西武新宿線の中井駅の北側は高台になっている。一の坂、二の坂と坂に数字が振られている。坂の上には目白大学があって、以前訪ねたとき教室から見える山の手の景色がすばらしかったことも思い出した。
ちょうど山手通りが西武線を越えたところが崖のようになっていた。一の坂を上がっていくと南側に開けたいい撮影ポイントがあった。そもそもこの崖は西武線と平行して流れる落合川が削った谷だ。手前に目立つ障害物が少なく、中望遠レンズでいい感じにビル群が切りとれた。
東京の凸凹は実に楽しい。
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