小学校一年か二年か、そのくらいの頃。
近所の商店街の縁日や祭りの夜店でぼくがよく買ったものといえば、金魚すくいの金魚でもなく、お好み焼きやラムネでもなく、まあまったくその手のものを買わなかったわけではないが、やはりメインの商品は当時月刊少年誌にたいてい付いていた付録だった。
ボール紙でできたパーツを切り取り、山折り、谷折りし、アルミニウムのようなやわらかい金属でできているピンやハトメで、あるいはのりやセロハンテープ、輪ゴムなどで固定し、連載漫画の主人公の持つ銃器やキャラクターたちの秘密基地みたいなものをつくりあげるのだ。
当時は毎月少年誌を一冊母から買ってもらっていたので月々の楽しみとしてそういうことはしていたのだが、別雑誌の付録やバックナンバーの付録は目新しくてついつい買ってしまうのだった。
そしてその翌日は近所の古書店をまわる。なぜなら付録は付録だけで売られていて、つくり方が載っている雑誌本体は別にさがさなければならないからだ。つくり方を読まずに組み立てられるほど昔の付録はヤワじゃなかった。
それと月刊少年誌の付録としては本体に連載されている漫画の続きが別冊として付録になっていた。これもまたついつい買い求めてしまうのだが、あくまで本体、付録で完結しているから、本体だけでは次号へのつながりがわからないし、別冊だけでは前月号本体からのつながりがわからない。当時の大人はよくもまあこんなビジネスを思いついたものだと感心する。
そんなわけで別冊を買うとその号の本体を古書店に買いにいく。場合によっては(こっちのほうが圧倒的に多いのだが)立ち読みですませる。今にして思えば、なんと時間的にぜいたくな遊びだったろう。
で、『質屋の女房』なのだが、安岡章太郎の青春小説ってところか。もちろんあくまで安岡章太郎の、だ。老成した青春小説だ。暗い時代を生きたからではないもって生まれた劣等感に貫かれた安岡ワールドだ。
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