2008年12月14日日曜日

林芙美子『風琴と魚の町・清貧の書』

景気が悪い。
中小企業は、どこもそうとまでは言い切れないが、資金繰りがたいへんだろう。ボーナスがカットされたりしているところも多いはずだ。
川本三郎が解説の中で林芙美子は貧乏を楽しんだ作家と評していた。いかにどん底の生活で喘いでいおうと、ユーモラスを忘れず笑い飛ばしてしまうくらいの気概が彼女の作品を支えている。同じ貧困でも『居酒屋』のジェルヴェーズのように貧困の末、酒におぼれ身を滅ぼしていく凄惨さがない。貧乏の度合いはいずれも同じかもしれないが、日本的な奥床しさや情緒が貧困の芯の部分に隠されている美徳と上手に絡まりあって、作品としてあたたかさを醸し出しているような気がする。
日本の企業にも不景気を笑い飛ばすくらいの度量があればいいのだが、事態はかなり深刻のようだ。



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