2025年9月9日火曜日

宗像誠也『教育行政学序説』

9月になっても暑さは収まるところを知らない。連日35℃を超える、あるいは迫る毎日である。せめて朝晩だけでも凌ぎやすくなってくれたらいいのにと思うが、夜遅くなっても申し訳程度に気温が下がるだけである。熱帯夜が続いている。
大学に進んで、少しは本でも読まなきゃなと思っていた。主に読みはじめたのは明治図書の教育学関係の翻訳古典。ヘルバルトとかコメニウスとか。正直遠い世界の話でピンと来なかった。古典より先に少し現代の話を知ろうと思い、読みはじめたのが宗像誠也である。長く東京大学教育学部で教育行政学を専攻された。この本が刊行されたのが1954年。増補版が69年に出ている。当時からしても決して新しい本ではなかった。
終戦後まもなく教育改革がなされ、新たな制度が生まれた。その内容も民主国家日本の確立をめざすものであったに違いない。自由と自主を重んじる教育体制のスタートも中華人民共和国の成立や朝鮮戦争の勃発によって雲行きが怪しくなる。マッカーサー解任後、戦後教育改革の再改革の動きが示されてくる。ひとつには教科書の検定制度・国定制度の検討が行われ、教育委員会も全市町村ではなく、人口15万人程度の都市にのみ限定設置をし、教育員は首長が議会の承認を得ての任命制になる。宗像が当時の教育行政への痛烈な批判を繰り返すのにはこうした時代背景があった。教科書検定制度、教育委員会公選制のほか、教員の勤務評定批判や全国学力テスト批判も再三行われている。憲法と教育基本法の理念を大切に、子どもたちを二度と戦場に送り込んではならない、根本的にはそういった主張だったように記憶している。
当時はあまり深く物事を考えなかった。教育行政への批判の背景にあるものなんてほとんど知らなかった。ただただ、これはよくない、理想はこうだ、みたいな主張をするのが心地よかった。もう一度この本を読んでみたら当時とは違った感想を持つかもしれない。