2018年1月5日金曜日

獅子文六『ちんちん電車』

あけましておめでとうございます。

正月、テレビ番組を視ながらテツandトモは鉄板だと思う。
おもしろくはないが、つまらくもない。場を賑わせてくれるし、お年寄りも子どもも楽しめる。「なんでだろう〜」という歌は耳に馴染み、共感を呼ぶ。小難しい漫才や品のないコントではないストレートな娯楽がある。「笑点」の大喜利と似た温度を感じる。ある種の健全さを感じる。NHK的なお笑いだ。
獅子文六の鉄道ものでは『七時間半』が知られているが、都電をモチーフにしたエッセーもあった。電車そのものというよりはその沿線にまつわる思い出話が主役だ。1966年に出版されている。都電撤去が本格的にはじまったのが1967年。去りゆく都電への愛惜がこめられている。
獅子文六は慶應義塾幼稚舎の時代、横浜に帰省するにあたり、札の辻から品川駅前まで1系統(品川駅前と上野駅前を結ぶ)によく乗っていたという。時代は明治。東京市電になる以前の東京電車鉄道の時代か。
少年期から慣れ親しんだ路線に乗り、高輪、芝、新橋、銀座、日本橋、神田と北上していく。なつかしい店や風景が綴られる。当時随一といっていい盛り場だった浅草の思い出も克明に語られる。『自由学校』執筆の際、東京じゅうを取材してまわったらしいが、このエッセイでは品川〜上野、浅草にフォーカスされている。逆に言えば、ブレがない。
都電が廃止されて40数年(荒川線が現存するが)、都電の思い出を語る人も少なくなってきた。戦争も震災もそうだが、路面電車も語り継がれていかなきゃいけないと思う。
話は戻るけれど、テツandトモは正月番組にはうってつけの存在になっている。
これは傘の上で升や鞠をまわさない海老一染之助染太郎だ。そう思っていたら、最近ではテツ(染太郎役に相当する)がスタンドマイクやらなにやらを顎の上に乗せる。おそるべしテツandトモ。こちらの思いが見透かされてしまったみたいだ。
なんでだろう。

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