2017年10月30日月曜日

宮下紘『ビッグデータの支配とプライバシーの危機』

イングレスというゲームがある。
以前も紹介したかもしれない。ポータルという拠点を占拠し、リンクでつないで陣地をひろげていく。そんなゲームだ。敵の陣地を破壊するための武器があり、ポータルにレゾネーターというパーツを挿すことで自陣にする。さらに防御用のアイテムもある。
エージェントと呼ばれるプレイヤーが参加している。レベルは1から16まで。一応レベル16が目標なのだが、それを過ぎても楽しんでいるユーザも多い。このゲームの奥深さを感じる(FoursquareというGPSを利用したSNSにゲームの要素を加えたアプリと考えていい)。
イングレスには(当然のことながら)膨大な数のエージェントが参加している。いわゆるビッグデータ処理技術の上に成り立っているゲームである。それぞれのエージェントがどれほどの個人情報と紐づいているかはわからないが(グーグルアカウントと連繋している人も多い)、多数のエージェントの動きを処理するとともにひとりひとりの活動履歴も残している。
毎日朝晩活動している場所ならそのエージェントが住んでいる地域であろうし、日中であれば勤務先がそのあたりである公算は高い。毎週決まった日に特定の場所でゲームをしているとすれば、その付近で習いごとでもしているかもしれない。こうしてイングレスを楽しんでいる人たちは着実に行動履歴を残していく。
その人の生活圏や移動のパターンがわかればマーケティングに活用できる(もちろんメールやSNSのアカウントと紐づいてればだが)。スーパーマーケットや地元商店のお買い得情報や勤務先近くのランチ情報の提供など。個人情報の利活用とはそういうことだ。これはイングレスに限った話ではない。大型店舗のポイントカードだって同じこと。
個人情報は今後さらに利活用され、個人も企業も自治体もその恩恵にあずかることだろう。そのぶんじゅうぶんな管理がなされなければならない。要するにそういうことだ。