汐留アドミュージアム東京。
中国広告祭は中国の中で最も権威と影響力のある国家レベルの広告祭。何年か前から日本でも紹介されるようになって、年々レベルアップしているのが手に取るようにわかる。以前はどちらかというと日本の学生デザインコンクールの上位入賞作品と遜色ないような気がしていたが、ここ1、2年はハッと目を見張る作品もあって、見に行くのが楽しみになってきた。
洗面台の排水口に抜け毛が今にも流されそうになっている。その抜け毛がパンダの絵に見え、「少なくなったものを、救いましょう」というキャッチ。これはもちろん、希少動物を救うキャンペーンではなく、髪の毛によい漢方薬の広告だ。
またこんな広告もある。シャツの胸ポケットに空き缶をゴミ箱に捨てるピクトが刺繍されている。これは公共広告で「文明というブランドを常に身につけよう。いつでも、どこでも文明ブランド」とコピーが書かれている。公共マナーについての広告だ。アイデアとしてはわかるが、案外訴求するテーマが非近代的であったりもする。お隣の国であり、経済発展の渦中にある国という意識もあり、ついつい日本との差は埋まっていると思うのだが、意外とそうでもなさそうだ。
TVCMで驚いたのは、やはり公共広告でタイトルは母の愛情。「一番優しい母だから、嘘を世の中で一番素晴らしい言葉に変えられる」というコピーがついている。母親が子どもたちを育てるために食べたいものも食べたくないといい、夜を徹して働くことを働くのが好きだからといい、炎天下にいても冷たい水を飲みたくないといい、病に伏せて苦しいときも苦しくないという。母親が貧しさに立ち向かって、子どもたちを立派に育て上げていくというとてもいい話で、きわめて儒教的道徳的なお国柄が見てとれる。一方でどうしていまさらこんなテーマで公共広告が成り立つのかとも思ってしまう。実は中国でも日本のようにだいじな何かが失われつつあるのだろうかという穿った見方もできなくもない。
グランプリは北京マラソンを題材にしたナイキのCM。ネズミが追われるように走るCMだ。これもネズミになんらかの意味合いがあるのだろうが、マラソンランナーをネズミにしちゃっていいのかと思ってしまう。
いずれにしても日本と中国。似て非なるこの両国は広告コミュニケーションにおいても大きな差異があるようだ。
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